二人セゾンの思い出

2020/01/19

日記

 自分の曲のデモをきいていたら、終わった瞬間に二人セゾンが流れ始めた。なぜ。そして2年くらい前に夜通し飲んだ日のことを鮮明に思い出した。当時わたしは中野で働いていて、その日は職場の人と一緒に朝まで飲んでいた。1軒目でウーロンハイを300杯くらい飲んで2軒目でジャスミンハイを400杯くらい飲んで完全に泥酔して踊り狂っていたら、そのお店に男の子二人組が入ってきた。わたしは多分彼らと意気投合して、「カラオケ行こう!」と誘われて「行きます!わたし歌うまいです!二人セゾン歌います!」とついて行った。が、もう朝の6時とか7時とかになっていてカラオケ屋さんのお姉さんに「もう終わってます」と言われた。そりゃそうだ。カラオケ屋さんを出て「えーじゃあやよい軒行く?」って誘われてわたしはシメにアイスを食べたい方の人間なのでこんなお茶割り700杯近く飲んだあとにやよい軒なんて食べられません!やよい軒は二人セゾン歌えないし!と思って「やよい軒なら帰ります〜」といったら、片方の男が沼袋近辺に住んでいるらしく、わたしは沼袋駅まで行って西武線だったのでじゃあ駅まで送ってけよ!ともう片方の男が言ってくれて、2人で帰ることになった。酔っぱらったわたしは当時のお家芸だった非モテ自虐もうすぐ30歳なのにすきなひとも彼氏も友達もいないエピソードを喋り続けたのだが何かのタイミングで男が「手つないどこ!」と言ってわたしは「手袋してるけど手つなぐなら手袋外しますね!」と言って手袋を外して、そして、男と手をつないで、手つめた〜さむ〜朝日まぶし〜とかいいながら2人でつないだ手をブンブン振りながら中野通りを歩いた。そうして、沼袋駅の近くまで来て「どうする?うち来る?」と言われた。でもここでついて行ったらきっとそういうことになるんだろうな→今日は本当にどうでもいいパンツ履いてるな→これじゃ戦えない→それにもうお化粧もぐちゃぐちゃだし→帰ろう→「帰ります!」を選択した。正直、その男の顔も声も何もかもタイプだったし中野通りで聞いたかぎりでは男には今彼女もいないし結婚もしていない感じだったけどここでホイホイついて行ったら良くない!と思った。というのは建前でこんな簡単にかっこいい男の家に行けてしまうかもしれない現実にビビってしまった。だって!こんなに素敵な男が!わたしごとき?!というわけで、沼袋の駅前で「ふだん中野で飲んでるんですよね?!」「飲んでる飲んでる」「じゃあまたどこかで会おうね!」と言って、男と別れて、わたしは朝の通勤ラッシュに紛れて下りの西武線に乗って上石神井のアパートへ帰った。


その日以来、男と出会った飲み屋に2、3年くらい足繁く通ったのだが、男には会えてない。わたしの人生は少しも映画じゃないんだなと思ったし、もしかして男はあの日泥酔したわたしが作り出した幻だったのかな、と思っていたのだけど、わたしと男を2人きりにしたもう片方の男の子とは半年後くらいに再会できて「あの日2人がいい感じだなと思ったから2人にしたんだよ」と言われて「アーーー!!!!あの時!!!!家に行っておけば!!!!よかった!!!!」と思った。自分のヘタレっぷりに嫌気がさしてその日もジャスミンハイ400杯くらい飲んだ。

誰かと知り合うのってタイミングが全てだからわたしはきっとあの男とはそういうことになれない選択を自分でしちゃったんだな、と思うことにして、男のことを一旦忘れることにした。そして、ちゃんとなんとなく今まで忘れていたのに、今日、不意に二人セゾンをきいたら全てを思い出してしまった。良い曲だな、わたしあのひとのことすきになりたかったんだな

路上で見かけた黒と白のハチワレのねこ