ねがいごとひとつかなうならあのころにもどりたい/もどりたくない

2022/11/21

日記

 ・某日

眠剤の量が種類も量も過去最大になっていて、処方通り初めて飲んだ日は7時間か8時間くらい寝られてヨッシャだったけれど、そのあと4時間か5時間くらい起き上がれなくて、なんかもうどうしたらいいのかわからなくなった。

・某日
5年か6年近く連れ添ったiMacが動かなくなった。正確にはYouTubeやネットフリックスをみることはできるのだけれど、DTMや映像の編集は一切できなくなった。わたしのやりたいことはパソコンがないとなんにもできないんだな、と打ちひしがれる。一晩中めそめそ泣いて、一旦パソコンが復活して、歓喜しながら念のため5テラのHDDに必要なものをぶちこむ。その日の夜、また動かなくなった。今度はさみしくはあれどなんとも思わなかった。かろうじて動作して下取りに出せるうちに買い替えちまおう。モリモリのMacBook Proを買う。23日に届く予定。早くきてほしい。狂いそう。

・某日
急遽ご依頼をいただいた撮影のため、久々にあかるい時間帯にひとりで出かける。途中の踏切で電車を待っている間、パンタグラフが太陽に反射する光でパニックになり、過呼吸っぽくなってしまい、余計パニックが加速する。くすり、くすり、くすり、とトートバッグの中を漁る。余裕を持って家を出たのにこのせいで約束の時間ギリギリになってしまった。撮影は無事できた。よかった。

・某日
お友だちに付き合ってもらい、今泉監督の「窓辺にて」をみにいく。平日の遅い時間なのもあって映画館は空いていたけれど、映画館に着くまでの人ごみでパニックになる。くすりを飲んで、お友だちを待ちながらテアトル新宿の椅子に座って読み差しの「号泣する準備はできていた」を開くものの、1文字もあたまに入ってこない。同じ行を延々と読んでいる。ふりをしている。じぶんの心臓の音と、ロビーの静かな雑踏で脳みそがぐちゃぐちゃになる。お友だちと合流できたけれど、スクリーンを前にしたら予告編のさまざまな映像や大きくなったりちいさくなったりする音で7割くらいやられてもう一錠くすりを飲む。ふるえが止まらない。本編が始まっても動悸がおさまらなくてくすりをもう何錠か静かに噛む。中盤で朦朧としてしまってこっそりラムネを噛む。映画はすごくよかった。なんとか最後までみられたのもうれしかった。けれどしばらくは映画館はこわいかもしれない。かなしい。みたいのにみそびれている/みそびれた映画がたくさんある。

・某日
増えた眠剤を飲んでまとまった睡眠時間が確保できたのは最初の一回だけで、あとはいつも通り細切れに目が覚める。2時間寝て、目が覚めて、3時間か4時間くらい展示にまつわる作業をして、また2時間くらい寝て、の繰り返し。オートリピート。

・某日
展示の簡単な打ち合わせをオーナーの方とする。「まあまだ1月まで時間があるからね!」と言っていただくが、わたしは考えるスピードが遅いし、動作も遅いし、なにせパソコンが動かない状態なので、夜な夜なパソコンなしでできる作業を先回し先回しでやっている。けれどそろそろ歌入れ(超時間かかる)もしたいし、ミックス(超時間かかる)もしたいし映像の編集(超時間かかる)もしたい。実際に手を動かしてみないと時間があるのかどうかすらわからない。情けない。

・某日
少し前から、初対面の第三者にわたしを紹介していただく際に「写真をやっている方です」と言っていただくことがほとんどになった。写真はすき。シャッターを切る瞬間はだばだばとアドレナリンが出ている気がする(アドレナリンであってる?)。わたしは何者なんだろう。でも曲を作っているときも映像を編集しているときも文章を書いているときも同じ種類のアドレナリンがだばだば出ている。気がする。じぶんとしてはまずはミュージシャンのつもりなのだが、昔はよく「星野源になりたい」と言って「身の程を弁えろ」と怒られたりした。写真も音楽も映像の編集も文章や歌詞を書くのも同じくらいすきだし、同じくらいの熱量でやっている。つもり。ただ専門職思想過激派のひとの前では「星野源になりたい」と言うのはやめたけれど、今でも星野源になりたいと思っている。でもインスタグラムでつながっているひとが多いから、「写真をやっているひと」というイメージがつきやすいのかもしれない。いちいち「音楽も文章も映像の編集もやってます」というのもめんどうなので、ニコニコして「初めまして、写真撮ってます」とご挨拶させていただいてやり過ごしている。

・某日
数ヶ月前、「きっとこのころには良くなっているでしょう!」と踏んですきなミュージシャンのライブのチケットを取ってしまい、少しも良くなっていない、むしろ悪くなっている状況でライブに行く。駅から徒歩3分のライブハウスにたどり着くのに、マップでGPSをオンにしているにも関わらず15分かかった。ライブハウスの中はすでにひとがぎゅうぎゅうづめで呼吸がしにくくなる。開演までの爆音最高DJ、キラキラ光る最高ミラーボール、2人組以上で来られている方たちがウキウキで喋る声、スタッフの方の「もう一歩奥の方へ詰めてください!」の大きな声の案内で案の定パニックになり、またも、くすり、くすり、くすり、とバッグの中を漁る。何錠か噛んで、ウーロンハイを飲んだら完全にトリップしてしまったけれど無事に家に帰ってこられてよかった。ライブは最高だった。でもライブハウスに行くのもこわい。かもしれない。賭けに出て人様に迷惑をかけることだけは絶対にしたくない。

・某日
映画館とライブハウスのことがあって、ここ2,3日はずっと家にいる。いままではなにかがひっかかって泣いてしまうことはあったけれど、突然なんの前触れもなくポタポタ涙が出てくるようになって、じぶんがおそろしい。どんどんコントロールできなくなっている。と、思うからコントロールできていないことになるのかな。

・きょう
一晩中ダイモを打ち、ポップを書く練習をし、シールのデザインをし続け、途中1時間か2時間くらい寝られたものの、いい加減あたまが回らなくなってきてこれを書いている。朝も朝だ。このままお昼まで起きていられて、お天気が良くなって、調子がこれ以上悪くならなければ、きょうは少し遠くに行きたい。行けたらいいな。行けるかな。行けなさそうだな。世界がどんどん狭くなっている。

踏切注意の看板のフィルム写真。