悲喜交交

2021/06/05

日記

3年くらい使っているヘッドホン(もう3年も使っているんだ)が知らない間に生産終了していた。特にこだわりはないから、壊れてしまったら後継機を買い直せばいいだけなのだけど、やっぱりなんとなくさみしい。

インスタグラムでフィルム写真を見て回っていたら「カメラおばさん」という地獄のようなハッシュタグを見つけてしまいなんとも形容し難いきもちになった。「カメラおばさん」って。プロフィールを見てもまだ「おばさん」を名乗るには早すぎる(とわたしは思う)年齢の、おそらく女性の方々が「カメラおばさん」のハッシュタグをつけてフィルム写真を投稿している。「カメラ女子」と名乗ることは憚られるのかしら。だから「カメラおばさん」なんだろうか。「おばさん」なら平気なんだろうか。それともひとから「おばさん」と呼ばれるくらいなら自分から「おばさん」と言ってしまえ!という精神なんだろうか。でも全て嘘かもしれないし。「カメラおばさん」になりたい、本当は「カメラおじさん」かもしれないし、「カメラお姉さん」や「カメラお兄さん」の可能性だってある。難しい世界。わたしはそういう形で自らをカテゴライズする勇気はない。できればだれのことも傷つけたくない。

先日、フィルムの現像待ちで1時間半くらい時間ができたので、ふと思いついて献血に行ってみた。人生初めての献血。いざ血液チェックで針を刺していただく段階まで来たところで「血管が見えない」と言われた。まさか。ここでも。
「健康診断のときってどうしてます?」「何回か刺されたり、それでもダメなら細い針でやってもらったり、1回手の甲?とかで採ってもらったこともあります」「そうよね、そうなのよね、献血の針って普通の採血の針よりもしっかりしているから、この血管で血液チェックと本採血と2回刺すのは厳しいですね」
そうか、そういうものか。わたしは多分もう無理だろうな、と思いながら、しかし、看護師さんはせっかく献血に来たのにこれで帰すのは申し訳ないと思ってくださったのか、わたしの手や腕を触りながら「ちょっと冷えてますね、寒いですか?一旦このカイロをお渡しするので、体を温めたら血管が見えるようになることもあるので、指先や腕やおなかを温めながら、ロビーで水分とって、20分くらいしたらまたもう1回血管見せてもらえますか?」とピンクのカイロを貸してくださった。言われるがままカイロを抱えて一旦ロビーへ戻る。あたたかい飲み物でも飲むか、と自販機を眺めるが、コーンスープ・カフェオレ・コーヒー・等々、濃いめの味のものしかなくて、コーンスープを飲むには今日は暑すぎるし、コーヒー系統の飲み物はあまり得意ではないし、と思っていたら「湯」と書かれたボタンがあるのを見つけた。お湯だいすき!迷わず「湯」のボタンを押す。お湯入りのカップが湯気を立たせながら出てきた。間違いなくお湯だ。献血ルーム最高。フーフーしながらお湯を飲み、ピンクのカイロを指に当てたり、腕で挟んでみたり、おなかに当てたり、「献血 血管 細い 断られる」でググってみたり、持ってきた「中国行きのスロウ・ボート」を読んだり、お湯を飲み終えてもう1杯お湯をもらってまたゆっくり飲んだりしながら、30分くらい過ごした。窓際で自分の右腕・左腕の関節あたりを見て、到底血管が見えるようになったとは思えないがとりあえず見てもらわねば帰れない、と思い、再度血液チェックの列に並ぶ。先ほど見てくれた方が気づいてくださり「見てみましょうか」と声をかけてくださる。
「うーん…さっきと変わらないね!見えないね、全然見えない。ちょっと○○さん、見てみてくれる?わたしには全然見えない、触れない」「んー?どれどれ、あれまー、…ほんとだね!見えないね!だめだね!」
2名の看護師さんが入れ替わり立ち替わりわたしの右腕・左腕と交互に見たり触ったりしてくれるがやっぱりだめで、申し訳なくなり「すみません、じゃあ今日はあきらめます!」と言った。
「せっかく来てくれたのにね。今度来るときは受付で『血管が細くて断られたことがある』って言ってくれれば、受付とかする前に採れそうかどうか事前に見ますから。そうしたら時間も無駄にならないし」
看護師さんはそう言いながら、わたしの紙に「血細」とメモをした。
「わかりました、すみませんでした」
椅子に横たわりながら献血をしている大勢のひとたちを横目に、またロビーに戻って番号が呼ばれるのを待つ。
すぐに番号は呼ばれ、やさしそうな受付の方が近づいてきて「せっかく来てくれたのにね、採れなかったんだってね」「これ青汁あげるね」「もしまた来てくれることがあったら、春とか秋とか、あったかい季節のときに、朝からしっかり水分とって、ごはん食べたすぐあとに来てくれたら採れるかもしれないから、またよろしくね」と言いながら「献血回数0回」と印字された献血カードと青汁をくれた。
ここまででちょうど1時間半が経っていて、献血ルームを出て、ビックロへ写真のデータを取りにいった。
また献血チャレンジしたい気持ちはあるけれど、わたしはもう献血には行かないと思う。スムーズに採血してもらえたことがない人生なのだから、献血なんてきっと無理なんだろう。かなしい。
こうしてわたしの人生から「献血」が通り過ぎていった。

韓国人のすきな俳優がインスタライブをしていてちょっと見ていた。「何か」が「おいしかった」と言っているのはわかったのだが、「何か」がなんなのかはわからなかった。こうしてみんな韓国語を一生懸命勉強するんだな、と思った。

江沼郁弥さんのライブ配信をYouTubeで見る。これを無料で見せてくれるなんて!どうにかしてお金をもらってほしくて、数日前に新グッズの通販を始められていたのでいくつか買わせていただくことに決める。江沼郁弥さんは間違いなくわたしの光源。ずっと音楽を作ってほしい。

坂道を見下ろしたフィルム写真。